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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)7030号 判決

原告

諏訪泉

右法定代理人

諏訪鑑

諏訪幸子

右訴訟代理人

星野成治

被告

石黒猛雄

右訴訟代理人

飯塚信夫

被告

東京都文京区

右代表者区長

遠藤正則

右指定代理人

山下一雄

外三名

主文

一  被告らは、原告に対し、各自金二七八万五四一〇円及びこれに対する昭和五三年七月二〇日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その四を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決の第一項のうち、被告石黒猛雄に対する部分は仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

一事故の発生

1  請求原因1の事実のうち、原告及び被告石黒が昭和五三年七月一九日当時、いずれも茗台中学校三年三組に在籍する生徒であつたこと、同日、同中学校三年三組教室内において、被告石黒の投げた本件下敷片〈編注・星形に切り抜いた長径約八cmの手裏剣状のもの〉が原告の左眼にあたつたとの本件事故が、発生したことは当事者間に争いがない。

そして、〈証拠〉によれば、昭和五三年七月一九日茗台中学校三年三組の第三時限目の授業時間中である午前一一時ころ、右組の教室内において、被告石黒が同教室前方中央部にあつた教卓付近から本件下敷片を投げたところ、該教卓から約三m離れた自席に着席していた原告の左眼眼球にあたり、よつて原告が左眼角膜裂傷、外傷性白内障の傷害(以下「本件傷害」という。)を負つたことが認められ〈る。〉

二被告石黒の責任

〈証拠〉によれば、本件下敷片は、軽量、薄形ながらやや硬質のプラスチック製の学習用文具である下敷を、径約五cmないし一〇cmとし、その先端は鋭角の星形状に切り抜いて作られた手裏剣様の急造玩具であつて、昭和三八年七月三日生で、当時一五歳に達し、優に該年令相応の弁別力を有していた被告石黒(この生年月日及び年令については、原告と同被告との間においては争いがない。)が、該下敷片を、約三mの距離から原告の身体に向けて投げつけたところ、原告の左眼球にあたり、よつて本件傷害を負わしめたことが認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実及び前記一認定の事実によると、被告石黒には、前示材質及び形状からなる本件下敷片を至近距離から身体に向けて投擲し、眼球等にあたつた場合、重篤な傷害を蒙らしむべき危険性を予見し、かかる投擲を思い止まり、もつて右の如き傷害を防避すべき注意義務を賦課すべく、これを怠り、前示距離、態様で本件下敷片を原告の身体に向けて投擲した過失があることが明らかであるから、同被告は、民法七〇九条に基づき原告の蒙つた本件傷害の損害を賠償すべき責任がある。

三被告区の責任

1 永島教諭は、被告区の設置する茗台中学校において学校教育法等の法令により生徒の教育をつかさどる者であること、本件事故発生日である昭和五三年七月一九日、茗台中学校三年三組の第三時限目は、同教諭の指導・監督のもとに学級活動の授業が行われたことは、原告と被告区との間においては争いがなく、本件事故が右学級活動の授業時間中に発生したことは、前記一認定のとおりである。

右事実によれば、永島教諭が国家賠償法一条にいう「公共団体の公権力の行使に当る公務員」に該当し、本件事故は、永島教諭が同条にいう「その職務を行うについて」発生したものであることが明らかである。

2  そこで、本件事故発生についての永島教諭の過失の有無に関して検討する。

〈証拠〉によれば、次の事実が認められる。

(1)  本件事故発生当時における茗台中学校三年三組の在籍生徒は男子二四名、女子一六名の計四〇名であり、別紙図面のとおり、縦8.55m、横7.1m、床面積約六〇m2の長方形の教室には、前方の壁面に黒板が掛けられ、黒板から約二mの位置に生徒用学習机の第一段が、二つ一組(巾約1.2m)で約0.5mの前後間隔に、廊下側から第一列には六組、第二、三列には各七組各列間間隔を約0.8mの位置に整然と配置され、該学習机の第一段と黒板との床面のほぼ中央部に、巾約0.9m、奥行約0.45mの教卓一脚がおかれており、第一列第一段右席が被告石黒、その左席が山崎、第一列第二段右席が原告、その左席が木村の各定席とされていたこと、

(2)  昭和五三年七月一九日、茗台中学校では同日が夏期休業の二日前であつたので特別な日課時限が組まれ、第一時限目と第三時限目とを学級活動の時間とし、夏期休業予定表の作成等に充てられていたものであるが、原告、被告石黒、山崎及び木村の在籍する三年三組においても同様の日課時限で授業が進められ、午前一〇時三〇分から午前一一時一五分までの第三時限目の授業は、同組教室において、担任である永島教諭の指導監督のもとに学級活動授業がなされ、生徒らは各自第一時限目に引き続き夏期休業予定表作成の作業に従事するとともに、あわせて同教室に隣接する廊下に設置された生徒用個人ロッカーの整理をし、この間、永島教諭は教室内を回つて生徒からの右予定表作成についての質疑に応答するなど個人指導をし、また、右ロッカー整理の監督をしていたものであること、ところが、右予定表作成の作業は、第一時限目から開始されていたので、第三時限目の後半には多数の生徒が右作業を完了して、いわゆる手持ちぶさたの状態となつたうえ、ロッカー整理のため自席を離れる機会があつたため、夏期休業を目前に控え、しかも通常と異なつた特別の日課時限が組まれたことによる開放感と興奮が加わつて、私語を交わす生徒、自席を離れる生徒が続出し、教室内が雑然とした雰囲気となつていたこと、

(3)  右第三時限目の授業時間中、山崎は、自席において、前記ロッカー整理の際発見したプラスチック製学用下敷を切り抜き、前記形状の本件下敷片を作成したものであるが、まもなく右山崎、被告石黒及び木村は、右予定表作成作業を終えて手持ちぶさたの状態で退屈していたことから、本件下敷片を互いに相手の身体に向けて軽く投げ合う遊戯を始め、傍にいた原告もこれに参加して、当初のころはそれぞれ自席に着いたままの状態で、後には目標をそれて自席周辺から遠方へ飛び去つた本件下敷片を拾うため、それぞれ数回自席を離れるなどして約五分間にわたり右四名が右遊戯を継続したこと、

(4)  その後、原告、山崎及び木村の三名は右遊戯行為から離脱し、次に机上で消しゴム片を飛ばす遊戯を始めたものであるが、被告石黒はこれに参加せず、自己の作成した夏期休業予定表の見直しをする一方、その間、引き続き所持していた本件下敷片を弄び、継続的に数回黒板の方面等へ投げてはこれを拾いに行くという一人遊戯をしていたこと、かくて約一〇分間が経過した午前一一時ころ、被告石黒が右一人遊戯で山崎の定席と教卓との中間付近にまで飛んだ本件下敷片を拾つて教室後方へ向けて投げるや、折柄自席で前記消しゴム片の遊戯をしていた原告の足元に落ちたので、原告に対しこれを拾つて返すことを依頼し、原告がこれに応じて本件下敷片を被告石黒の方向へ投げ返した際、教卓付近まで飛び去つたので、被告石黒はこれを再び拾つて、教卓付近から約三m離れた自席にいる原告の身体へ向けて投擲したところ、本件下敷片は、たまたま床に落ちた前記遊戯用の消しゴム片を拾い終わつて、前屈姿勢から上体を起こした原告の左眼眼球にあたり、これにより本件傷害を負つたこと、

(5)  永島教諭は、この間、いわゆる机間巡視をし、質疑のある生徒の席でこれに応答するなど個人指導を行つていたものであるが、授業時間の後半に至つて前記(2)のとおり教室内が雑然とした雰囲気となるや、騒ぐ生徒に対し、散発的に「そこ、うるさい。」などと警告を発し、これによつては一時的静粛状態を保つにすぎず、まもなく再び騒然とした状態に弛緩するのに、生徒全員をして静粛にして秩序ある学習態度に保持せしむべき効果的な措置をとらず、また、このころには、前記(2)のとおり、多数の生徒が夏期休業予定表作成作業を完了していたので、これらの生徒に対しては、各自夏期休業期間中の問題集の解答努力方を指示したものの、該指示は不徹底で、大多数の生徒が手持ちぶさたの状態でそれぞれ気ままな行動をとつていたのに、これらに対し右指示を周知徹底させるべき適切な措置をとらないで放置し、一部の生徒に対する個人指導に注意力を集中しすぎ、前記のとおり、山崎が本件下敷片を作成し、被告石黒ら四名が約五分間にわたりこれを投げ合うとの遊戯をなし、被告石黒がその後約一〇分間にわたつて断続的に本件下敷片を飛ばし、自席を離れてこれを拾いに行き、ついには本件事故が発生したことのいずれにも気づかなかつたこと、

(6)  原告は、前記受傷直後左眼に激痛を覚え、しばらく自席で左眼を押えてうずくまつていたが、痛みがとれないので保健室で治療を受けるべく、被告石黒が付き添つて教室を出て、途中、廊下に設置された冷水機で数分間局部を水洗したのち、保健室で養護教諭に前記受傷の事実を訴えたこと、同教諭から教頭への報告により本件事故が初めて学校側の知るところとなり、原告の両親、校医等との連絡を図つたが、右両親との連絡は果せず、この間、第四時限目の大掃除が開始され、原告は保健室から職員室へ移されたこと、一方、永島教諭は、本件事故に気づかないまま三年三組の教室で大掃除を監督中、被告石黒からの報告により初めて本件事故の発生を知るに至つたものであり、その後、ようやく教頭から原告の父に連絡をとり、原告を病院へ送つて治療を受けさせることについての承諾が得られたので、原告はタクシーで東京都立大塚病院に連れられ、同病院において前記受傷の治療を受けたこと。

〈証拠〉のうち、右認定に反する部分は、前掲証拠に照らし採用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

ところで、公立中学校の教師が教室に在室して授業を行つている場合においては、その授業内容に応じた適宜の方法により生徒の動静に気を配り、いやしくも生徒の一部の者が教師の指示に従わずに文具等により危険な遊具を製造し、これを投げ合う等の事態が発生しないように監視すべき注意義務があると解されるところ、前記事実関係によれば、本件事故は、公立中学校である被告区立茗台中学校三年三組教室内において、夏期休業二日前の昭和五三年七月一九日に、三時限目の学級活動の授業時間内である午前一一時ころ、担任教師である永島教諭の在室中に発生したものであり、しかも、同事故の成創器となつた本件下敷片は、右三時限目の授業時間中に山崎が永島教諭の目を盗んで製造し、これをまず山崎・被告石黒・原告・木村の四名が約五分間にわたり自席近くで投げ合い、次いで約一〇分間、被告石黒において数回にわたり断続的にこれを黒板近くに投げて拾いに行くという動作を繰り返し、その後、本件下敷片を拾つて教卓近くまで投げ返した者が原告であつたところから、これを拾つた被告石黒が原告を目がけて本件下敷片を投げつけたため、本件事故が発生したものであるところ、永島教諭は、この間漫然と机間巡視を行つて他の生徒の質疑に応答していて、山崎が本件下敷片を製造したことや、被告石黒等が自席を離れたりしながら少なくとも一五分以上にわたり右遊戯行為をしていたことのみならず、本件事故が発生したことさえもすぐには気づかず、同日午前一一時一五分の三時限終了時刻を過ぎてようやくこれに気づいたというのであるから、右三時限目が学級活動という生徒の自主性を重視する授業内容であつたということを考慮しても、永島教諭には、右監視義務を怠つた過失があるというべきである。

四損害額

1  本件受傷の程度、これに対する加療の経過及び結果

〈証拠〉によれば、次の事実を認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

(1)  原告は、昭和三八年一二月二七日生の健康な男子であり、本件事故発生直前の左眼の裸眼視力は1.0で、左眼機能に異常はなかつたところ、本件事故により左眼角膜裂傷、外傷性白内障の傷害を受け、この治療のため、昭和五三年七月一九日から同年八月一二日までの二五日間、東京都立大塚病院に入院し、同年七月二六日水晶体摘出手術を受け、退院後も同年九月下旬ころまでは概ね週一回、その後も昭和五四年一二月ころまでは月一回程度の頻度で同病院に通院し治療を受けた結果、原告の左眼視力は一時裸眼で1.2にまで回復したものの、その後前記傷害に起因する後発性白内障のため再び視力低下を来たし、同年一二月一九日同病院で再手術を受け、この前後四回にわたり同病院に通院し治療を受けたものであり、また、この間の昭和五三年九月二〇日から同年一〇月六日までの間左眼の視力低下を矯正するため、三回にわたり御茶ノ水リッキー診療所に通院してコンタクトレンズを装着する治療を受けたこと、

(2)  原告は、昭和五五年六月二〇日、左眼視力が裸眼で0.02、コンタクトレンズで矯正して0.8、左眼の調節機能不能(無水晶体眼)との現症で症状固定との診断を受け、昭和五八年六月九日現在、左眼視力は裸眼で0.01、コンタクトレンズで矯正して0.9、無水晶体眼による左眼の調節機能不能との後遺障害を残していること、

(3)  原告は、右後遺障害によつて、左眼と右眼(裸眼視力0.2、矯正視力1.2)との視力差が著しいので、眼鏡を使用することができず、コンタクトレンズによる矯正によらざるを得ず、これによる左眼精の疲労が激しく頭痛を感じることがあり、コンタクトレンズの使用時間が限定されていて長時間継続して使用することができず、さらに、前記調節機能の障害によつて遠近感の感得が困難となつたことから、勉学の障害となり、かつ、日常生活に不便を感じる結果となるとともに、本件受傷による精神的衝撃に起因する勉学意欲の減退、前記治療の必要及び後遺障害によつて学業成績に悪影響が及んだこと。

2  損害額の算定

(一)  積極損害

(1) 治療費 一一万四三二〇円

〈証拠〉によれば、原告は前記四の1の(1)認定の治療費として、東京都立大塚病院に対し九万五二七〇円、御茶ノ水リッキー診療所に対し一万九〇五〇円の合計頭書金額の支払をしたことが認められる。

(2) 付添看護費 五万四〇〇〇円

〈証拠〉によれば、原告の母である諏訪幸子が、前記入院期間中である昭和五三年七月一九日から同年八月五日までの一八日間、原告の付添看護にあたつたこと、本件傷害の部位程度及び原告の年令からすると、この付添看護は必要であること、これによつて原告は一日当たり三〇〇〇円の割合による一八日間の付添看護料相当額である頭書金額の損害を蒙つたことが明らかである。

(3) 入院諸雑費 一万七五〇〇円

〈証拠〉によれば、前記入院期間中、一日当たり七〇〇円を下らない入院諸雑費を要し、原告は頭書金額の損害を蒙つたことが明らかである。

(二)  逸失利益 四〇七万六九四三円

前記認定事実及び経験則によると、原告は、本件事故発生当時一四歳の健康な男子であつて、本件傷害による後遺障害がなければ、一八歳から六七歳までの四九年間にわたつて就労し、少くとも年間一三六万三八〇〇円の収入(原告引用の統計資料どおり)を挙げ得たことが明らかであるところ、前記認定のとおりの左眼視力低下及び調節機能不能との後遺障害を残したものであつて、これにより右期間につき就労による得べかりし利益を失つたこともまた明らかである。

ところで、右後遺障害は、労働基準法施行規則別表第二身体障害等級表中、第一二級一号に該当し(視力障害に関しては、視力矯正によつて不等像を生じ、両眼視が困難であるとの事実を肯認するに足りる証拠がないから、矯正視力による。)、右等級号に照応する労働能力喪失率は、一応一四%とされることが明らかであるが、前認定のとおり、原告はコンタクトレンズの使用を余儀なくされ、その結果、長時間の継続的使用ができず、またその使用による左眼精の疲労と頭痛感に悩まされること、他方、若年の原告には、右障害を何程か克服しうる可塑性を期待すべく、また、調節機能不全は、健常者も六〇歳を超えるときはこれを免れ得ないものであることが明らかであるから、以上の諸事情を総合し、前記可稼働期間を通じて定率の逸失利益率を求めれば、二〇%と推認される。

よつてライプニッツ方式により年毎に年五分の割合による中間利息を控除した本件事故発生当時における逸失利益の現価は、頭書金額となる。

(年収136万3800円×喪失率0.20×〔67歳までの53年間の現価率18,493−18歳までの4年間の現価率3,546〕=407万6943円。円未満は推計不能につき切捨て。)

(三)  慰謝料

前記本件受傷の部位、程度、治療の経過、期間、後遺障害の程度、右受傷、その治療及び後遺障害が原告の日常生活及び学業成績に及ぼした影響、原告が本件事故当時年少であつて今後の長い生涯を右後遺障害に苦しむべきこと等諸般の事情を総合考慮すると、本件事故により原告が蒙つた精神的苦痛の慰謝料としては三〇〇万円が相当である。

(四)  過失相殺

前記三の2の(2)ないし(4)認定のとおり本件事故は、原告が、学級活動の授業時間中であるのにもかかわらず、被告石黒ら三名とともに教室内で本件下敷片を投げ合う遊戯を始めたことがそもそもの発端であり、また本件事故の直接の原因となつた被告石黒が原告に向けて本件下敷片を投げた行為は、原告が右遊戯から離脱した後約一〇分間経過した後になされたものであるが、右下敷片は、被告石黒の依頼に応じて原告が拾つて被告石黒に投げ返したものであつて原告の右行為も本件事故の誘因の一つというべく、さらに、〈証拠〉によれば、原告は右時点において本件下敷片の危険性を充分認識していたことが認められるから、原告は右認識にもかかわらず授業時間中に前記一連の行為をなし、その結果、本件事故発生に至つたものであるから、これを被害者の過失として、(被告区との関係では職権により)損害額の算定につき斟酌することとし、前記(一)ないし(三)の損害額の合計から概ね二割を減じ、本件事故により被告らに賠償を求めうる損害額は五八〇万円とするのが相当である。

(五)  損害の一部填補

原告が学校安全会から本件事故の見舞金として三〇六万四五九〇円の支払を受けたことは、原告と被告区との間では争いがなく、原告と被告石黒との間では弁論の全趣旨により認められる。そして、〈証拠〉によれば、原告は被告石黒からも本件事故の見舞金として二〇万円の支払を受けていること、原告は、右各見舞金の合計三二六万四五九〇円を本件の損害賠償金の一部に充当したことが認められる。

(六)  弁護士費用

〈証拠〉によれば、原告は弁護士である原告訴訟代理人に対し、本訴の提起追行を委任し、費用・着手金として三〇万円を支払い、成功報酬として勝訴額の七パーセントに相当する金員を支払うことを約したことが認められるが、本件の難度、審理の経過及び結果並びに前記認容額等に照らすと、このうち、二五万円が被告らの本件不法行為と相当因果関係のある損害とするのが相当である。

五結論

よつて、原告の被告らに対する本訴請求は、各自右損害賠償金の合計二七八万五四一〇円及びこれに対する本件事故発生の日の翌日である昭和五三年七月二〇日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して(被告区に対する仮執行の宣言は相当でないからこれを却下する。)

(薦田茂正 中野哲弘 根本渉)

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